この度、俺様パイロットとご成婚しました。

 セントラルパークでベーグルサンドを食べたあとは、ソーホーまで電車で移動し、ギフトショップで雑貨を見て回った。佐知にはカラフルな刺繍の入ったコースター、真由子にはストールを購入した。

 事務所のスタッフには美味しそうなスティックタイプのチーズケーキを買い、大満足の観光となった。

「混んできましたね」
「そうだな」

 雑貨店を出ると時刻は十五時過ぎになっていた。午後になると団体のツアー客も増えてきて、ソーホーには人通りが増えてきた。

「あっすみません」

 あちこち写真を撮ったり、興味を惹かれるものがあってフラフラしていたからだろう。
 鈴菜は何度か人にぶつかってしまい、条件反射で日本語で謝る。

「鈴菜」

 見かねた航輝が他の人にぶつからないように鈴菜の肩を抱き寄せる。
 手を繋いでいたときよりも、身体同士が密着し距離も近くなり、彼の存在をより身近に感じてしまう。

(人に迷惑をかけないためだから)

 必死で自分に言い聞かせるものの、浮き立つ心を抑えられない。
 はたからみればふたりは仲睦まじい本物の夫婦にしか見えないだろう。

(本当は単なる契約夫婦なのに)

 なぜいまさらこんな些細なことが気になってしまうのだろう。

 ニューヨークに来たのも契約妻としての義務だからで、昨日のように思わせぶりなセリフにドキドキしたり、手を繋いだりする必要はないはずだ。

 実際のところ鈴菜は彼をどう思っているのだろう。

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