灰色の日々に、君が灯した甘い色
飲むのがもったいない。

このハートを壊したくない。

彼が作ったカフェラテは、今まで見た中で一番素敵に見えた。
丸みのあるハートの部分をずっと眺めていたい。

(こういうとき、若い子の間では何て言うの?)
(ビジュいいね? ……あれ、使い方間違ってる?)

スマホにメモした言葉、こういう時に限って思い出せない。


席に着いたら、しっかり目に焼き付けてから写真を撮ろうと決める。

トレーを持って席へ向かおうとしたときに、背後から「お、大胆だねー」と言う男性店員の楽しそうな声が聞こえた。

なんとなく振り返ろうとした瞬間、カフェラテが揺れる。

(あっ、だめだめっ!!)

危うく崩れてしまいそうで、慌てて動きを止めた。
大きく深呼吸してから、そろりと歩き出す。


ふと、前にカフェラテを注文していた女性のカップが横目に入った。

(あれ?)

そこに描かれていたのは、リーフの模様だった。

自分のカフェラテに目がいく。

(こっちは、ハートだよね……)


偶然かもしれない。練習中なのかもしれない。

それでも、頬が火照るのを止められなかった。


(全部、たまたまだよ)
(意味なんて、きっとないんだから。うんうん)

――それでも、にやけてしまう。
こんなだらしない顔、大人になってから今までしたことはなかった。

(どうしたら……元に戻せるの?)

今の私の姿、誰にも見られたくない。

下を向くと、温かいミルクの甘い匂いと、エスプレッソの鋭い香りが混ざり合って鼻をくすぐる。

空いている席に向かってゆっくりと歩いた。
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