灰色の日々に、君が灯した甘い色
その帰り道、私は駅ビルの本屋にふらりと立ち寄る。
普段なら手に取らないようなファッション誌を買ってしまった。


《マイナス5歳、自分に魔法をかける色》


そのキャッチコピーに惹かれたからだ。

前に、同僚から「地味な格好ばかりで勿体ない」と言われたことがある。
たしかに私はいつも、黒いスカートに、灰色のカーディガンばかり。

この世界になじむ、安心する色のはずだった。

そう思っていたのに。


(ああいうラテアートが似合う女の人って……)
(どんな色の服を着るんだろう?)

モノクロ以外の色が無性に気になってくる。


さらに、レジで会計を済ませたあと、ふと足が止まった。
出口を示す案内板の近くに、大きな葉を広げた観葉植物が置かれていて、コーヒーショップで見た木と似ていたのだった。

近付いてみると、葉は丸みを帯びていて、先端だけがすっと尖っている。

(これ……ハートの形みたい……)


――緑色のハートの木。

私の名前。

ハートのカフェラテ。


(……たまたま、なんだよね……?)

それでも、彼の笑顔が浮かんでくる。

ふわふわとした気持ちのまま、紙袋に入った雑誌をぎゅっと抱きしめる。


家に帰ると、夕ご飯を食べることも忘れて雑誌のページをめくる。
色とりどりの華やかな服を眺めながら、胸の奥がそわそわと騒いでいた。
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