灰色の日々に、君が灯した甘い色

第4話 魔法の赤色

――数日後。
雑誌の影響を受けて、靴下に差し色の赤を入れていたものの、なんだかしっくりこない。

燃えるような赤色が、今年の夏のトレンドカラーらしい。
さすがに派手な色は勇気が出なくて、くすんだ赤色にしたのだけれど……。

(やっぱり浮いてる気がするなあ……)

足元に視線が行くたび、アスファルトと黒いパンプスの落ち着いた空間に、赤が邪魔しているような気になった。


取引先との打ち合わせの帰り道、私はお店から出てくる彼を見かけた。

(あれは……私服の彼……!!)

カフェの制服とは違う、若葉色のシャツを羽織った姿が新鮮だった。
ゆったりとしたシルエットで、最近の若い男の子らしい服装だと思った。

新しい彼を見られた嬉しさで、思わず胸が弾む。

自意識過剰だけれど、私の名前と似ている色をした服を着ているというのも、くすぐったかった。


(お、ビジュいいねー!)
(なんて、急に話しかけたら怪しまれるかな?)

ようやく覚えた流行っているらしい言葉、今なら彼に伝えられそうだった。


――けれど、私の足はすぐに止まった。


彼の後ろから、明るい笑い声を響かせて若い女の子が出てきたのだ。
ふわりと揺れる赤色のワンピースを着て、親しげに彼の腕を叩く。

風が吹いてワンピースの裾が舞い上がった。

「――っ」

それはまるで、光を味方につけたような赤。
歩くたびに、街角を一瞬で鮮やかに染め上げていく。

華やかな二人の姿は、この前買った雑誌の切り抜きを見ているようだった。
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