灰色の日々に、君が灯した甘い色
オレンジ色が混ざり始めたビル街。
建物の窓ガラスに映る私の姿が横目に入る。

灰色の服ばかりを選んできた私は、どう考えたってハートのラテアートが似合わない。

赤い靴下まで履いて、本当に恥ずかしい。

「確かに。……これは、魔法だわ」


――現実を見せてくれる、赤色。


「……こんなの」
「足元だけ還暦のお祝いみたいじゃない?」

そうつぶやくと、口元が勝手に緩み始めた。

「……あはは……!」

急に可笑しくなってくる。

(……そうだよ)
(年下の子に興味を持たれるなんて有り得ないんだから)


じわりと視界が滲む。

「もう、いい歳して……やだなあ、私って」

慣れない色まで身に着けて。

ひどく滑稽で、情けない。


(こんなの笑うしかないでしょ)

勝手に涙までこぼれてきた。

手の甲で雑に拭うと、ガラスに映る地味なシャツを着た自分の姿に、しかめっ面をしてみる。


(……私は、モノクロの世界の住人なんです)


小さく頷いてから周りを見渡すと、もう誰も私を異物のように見ていない。

それが……安心する。


昼間はまだ、じっとりした暑さが続いている。
でも夕方には、少しだけ涼しい風が吹いてくるようになった。

夏が、急ぎ足で終わっていくのだなと思った。
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