灰色の日々に、君が灯した甘い色

第5話 冷めた紅茶と、温かいコーヒー

――私だって、恋愛の経験はある。

最後に別れた人は同い年で、いつかは結婚するものだと、疑いもなく信じていた。
その人とは、ドラマのような劇的な破局だったわけではなく、静かに熱が冷めていくだけのものだった。

『気持ちがなくなった』と告げられた時、驚きはなかった。

ずっと前から、彼の気持ちが離れていることには気付いていたから。

連絡の頻度が減って、既読がつくまでの時間が引き延ばされていく。
少しずつ、会えない理由も並んでいった。

一緒にいるはずなのに、寂しいと思う瞬間が増えていく。

それを認めるのが怖くて、明るい色の服を買った。
いつもより丁寧に化粧をして、鏡の前で笑う練習もした。

会えた日は、なるべく明るい話をした。

楽しいと思ってほしい。会いたいと思ってほしい。
付き合い始めた頃のような二人に戻りたかった。


けれど。
どれだけ色を足しても、離れていく彼の気持ちだけは鮮やかにならなかった。


『翠といても、一人でいるのと変わらない気がする』


――とうとう来てしまった。

向き合って座るテーブルの上、手付かずの紅茶から湯気がなくなる。

お互いの視線が交わることはなかった。
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