灰色の日々に、君が灯した甘い色
外はまだ明るく、アスファルトからは昼間と変わらない熱気がむわりと押し寄せてくる。
最近は不安定な天気が続いて、重たい雲と青い空の間から太陽が見え隠れしている。


駅へ近付くにつれて、白い石積みの外壁が見えてくる。
胸がそわそわと騒がしくなってきた。

『ピエトラ・ビアンカ』と刻まれた看板。
ガラス窓から、あの大きな葉の木がなんとなく見える。

お店の横を通るとき、視線が吸い寄せられるのを止められない。
けれど、ガラス越しに彼の姿は見つけられなかった。

(あー……良かった)

そう思いながらも、気持ちがさらに沈んでしまう。


モーニング帯には彼が居ないことを知っているから、出勤時は何とも思わないのに。
同じ道を歩いていても、午後になるとやっぱり気になってしまう。

小さくため息をついていると、突然目の前に人影が立った。

「すみません。このビルは、どこにありますか?」

また、知らない人に道を尋ねられた。
スマホを差し出し、困り果てた様子の若い男性だった。

あのコーヒーショップの彼と同じくらいの年齢に見える。

「……」

私は何も言えずに、男性とスマホを交互に見た。

今、若い子と関わるのは正直に言えば少し気が重い。
一瞬でも浮かれてしまった自分を思い出して、苦しくなるからだ。

(……でも、この人は、あの彼じゃない)


「そのビルは、えっと……」

困っている人を前にして、身構えたことに申し訳なさが込み上げる。
少しの罪悪感を抱えながら、道順を教えようと男性のそばに寄った。

男性も、スマホを私に差し出すようにぐっと近付く。

すると――
頭上から、私たちを遮るようにスッと影が落ちた。
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