灰色の日々に、君が灯した甘い色

【彼目線】第2話 白色のピエトラ・ビアンカ

七月下旬。
オフィス街の昼下がり。
会社員が行き交う大通りにこじんまりと店を構える、コーヒーショップ、『pietra bianca(ピエトラ・ビアンカ)』。

ホットサンドとコーヒーの注文が集中する時間帯は、テイクアウトも加わってさらに慌ただしくなる。
土日とは違って、平日の店内はお客さんの出入りが多く、ほぼ満席になっていた。

ノートPCで作業をしたり、談笑したり、スマホや本を片手にのんびり過ごすお客さん。

スチームミルクの音、豆を挽く香り、そして難しそうなビジネス用語。

白を基調とした店内に、様々な香りと音が響き合う。


レジが空いた隙を狙って、僕は隣に立つ従兄弟に声をかけた。

「――桃兄、Sサイズの紙袋のストックってどこだっけ?」

「バックヤードになかったか? 紙ナプキンの隣」
「てか、こら。仕事中は、“杖野(つえの)さん”か“店長”だ」

「……すみません」

「ルカ……ル、ル、白石くん……っ。頼んだぞ!」

「はい」

「ぷっ。店長だって癖が抜けてないって」
「白石くん、ピーク終わったら一緒に探しに行こ」

コーヒーマシンを丁寧に拭いていた先輩が、可笑しそうな顔を向ける。

「はい、ありがとうございます!」

桃兄――店長は、からっとした笑顔で僕たちを見ると、空いた食器を返却口へ運ぶお客さんにいち早く気付いて、さっと店内へ向かった。
食器を返した会社員が笑顔で頭を下げる。
僕も店長と声を揃えて、「ありがとうございました」と見送った。


子どもの頃からよく知っている従兄弟の、働く背中を追うのは不思議な感覚だった。
プライベートでは大雑把で奥さんに叱られてばかりなのに、店の中では驚くほどきめ細やかな気配りを見せる。
それでいて、周りを和ませる明るさは昔から変わらない。
その雰囲気が、店にも染み渡っているようだった。

(最初の修行先が、ここの店で良かった……)
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