灰色の日々に、君が灯した甘い色

【彼目線】第3話 青色の社員証と、彼女の名前

それから、彼女とは時々店で会えるようになった。
平日のランチ帯が少し落ち着く頃に、いつも来店するようだ。
 
今日もピークを乗り切り、先輩たちはほっとした表情で、それぞれの持ち場の片付けを始めた。

「白石くん、疲れたでしょ? 先に休憩していいよ」

「大丈夫です。あの、お先にどうぞ」
 
先輩の気遣いを、僕はやんわりと笑顔で断る。
 
ソワソワとした落ち着かない気持ちのまま、レジ前でテイクアウト用の紙カップを補充していた。

 
そうこうしているうちに、自動ドアが開く気配がして肩が大げさに跳ねる。

「いらっしゃいませ」

反射的に声が出る。
入り口へ顔を向けると、黒髪をふわりと揺らした一人の女の人が視界に入った。

(き、きた!) 

灰色のカーディガンを着た彼女が、ゆっくりとこちらへ向かって来る。
そして、カウンター越しに向かい合うと、いつもの注文を受け取る。    

    
彼女は、この辺りで働いているのだろうか。
青い紐付きの社員証を首から下げているけれど、胸元を見つめるのは失礼な気がしてできない。

自分の口元が、不自然に上がっているような気がして恥ずかしい。
どうしてこの時は、いつもの笑顔になれないのだろう。 
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