灰色の日々に、君が灯した甘い色
休憩時間に駅周辺を散策しながら、なんとなく灰色のカーディガン姿の人を探してしまう。

(僕は一体、何してるんだろう……)

僕と彼女は、店員とお客さんだ。

(もし今、バッタリ会ったとして……何を話す?)

いや、だから、僕たちは店員とお客さんだ。
 
(どうしたら、もう少し話せるのかな)

……。

店員から、しかも名も知らない男が急に声をかけたら、気持ち悪がられるに決まっている。

(僕は何を期待しているんだ……)


いつの間にか、店近くの大きな交差点まで来ていた。

「あっつ……」

マスクを少しずらして、顔に風を送る。
帽子の中もきっと汗だくだ。

信号待ちで並んでいると、隣にいた小柄な女の人の声が、不意に耳に届いた。


「人間は、いつ男と女になるのか……」


(!?)

思わず、隣に視線をやる。
すぐ横にいた男の人が、うんうん頷きながら「酒が入ったときかな」と答えた。


(酒……、お酒!?)
(うちの店はアルコール扱ってないよ。コーヒーショップだもんな)

(男……女……)
(いやだから、僕と彼女は…………)


「……はあ」 

大きくため息をついて、信号が青に変わると同時に、急ぎ足で店へと戻った。
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