灰色の日々に、君が灯した甘い色
無機質なオフィス街の中で、彼だけが、特別な色彩をまとっている。

仲の良い同僚とは、取引先の営業マンや、よく行く居酒屋の渋い店長の話で盛り上がる。
とは言っても、私は異性と関わることがあまりないから、いつも聞き役なんだけども。

唯一、コーヒーショップの彼の話ならできる。
きっと同僚は興味を持つ。

でも私は、一度も彼の話をしたことがない。
軽いお喋りのネタに消費されるのが、なんだか彼に対して失礼な気がした。

それに、なぜか知られたくなかった。


ふと、今朝の、指輪を付けていた若い男女を思い出す。

それでも、この気持ちは恋だとか愛だとか、そんなものじゃない。

ただの癒やし。

あるいは――『推し』というものなのかもしれない。

(そうそう。好き、じゃなくて。推し)

これは、通勤電車の中で、若い女の子たちから聞いた言葉の一つ。

(あとは、何だっけ?)

「尊い……沼……?」

(うんうん。そういうこと)
(推しで、尊くて、沼なんだろうな)

そう言い聞かせると、なぜだかほっとする自分がいた。
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