灰色の日々に、君が灯した甘い色
受け取りカウンターで待つ間、店内を見ているとホットドリンクを飲んでいる人が意外と多いことに気付いた。
冷房が効いているからなのか、湯気の立つカップを手にしている人もちらほらいる。

(夏にホットって、そんなに変じゃないのかな?)

じゃあ、あの日、彼があんなに驚いていたのは何だったのだろう。

(私がものすごく寒そうな顔でもしてた……?)
(猛暑の中、私だけ真冬の結界でも張ってるように見えたとか?)

(いやいや、何考えてるんだか)

軽く吹き出して、マシンの前で作業をしている彼の背中を観察する。

白い照明が、彼の髪を柔らかく照らす。
清潔そうなシャツも、シワひとつない黒いエプロンも。
彼のまとう白だけは、なぜこんなにも鮮やかに見えるのだろう。


見つめていると、彼がゆっくり振り向いた。

「お待たせしました!」

すぐに目が合って、とくんと胸が高鳴る。

彼はにっこりと微笑みながら、トレーを差し出す。
置かれたカップを見て、私は思わず息を呑んだ。

「わあ、可愛い……!」

陶器のカップの中には、ふわりと浮かぶ真っ白なハート。
きめ細やかな泡の上に描かれたそれは、あまりにも繊細で美しかった。

「すごいですね……!」
「ここのお店ってラテアートもするんですね!」

「こんなに綺麗なハートの形、初めて見ました……素敵だなあ」

(あああっ!?)

ハッとする。
トレーを受け取ることも忘れて、喋りすぎてしまった。


(は、恥ずかしいい……)

気まずくなって視線を泳がせていると、穏やかな声が落ちてくる。

「良かった……ありがとうございます」

顔を上げたら、彼が照れたような笑みを浮かべていた。
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