せっかち姫とじっくり武人
「ペニスはこうして全体に圧迫感を与えながら上下にこすると、とても気持ちがいいんです」
「そっ、そうなのですね……」

 ある夜、ランナルは寝台の上でイルヴァに見せつけながら、己のムスコをシコシコと片手でしごいた。生身の男茎にふれることは、まだイルヴァには怖いだろうと思い、まずは見ることに慣れさせようと思ったのだ。
 不思議そうな、興味深そうな、それでいて恥ずかしくてあまりじっと見つめることはできず、時折視線をそらしてしまうイルヴァは、やはりひどく愛らしいと思った。男の自慰行為について冷静に解説しつつも、生娘の彼女に男のオナニーを見せつけているのだと思うと、ランナルは感じたこともない興奮を覚えた。女性に見せつけて感じるような性的嗜好など自分にはないと思っていたが、相手が未通のイルヴァだからこそ、そんなふうに興奮したのかもしれない。

「イルヴァの手でも、こうして俺のペニスをしごいてもらいたいです」
「私に……できるでしょうか」
「できますよ。何事も練習して慣れればいいのです」
「私も、ランナル様を気持ちよくさせられるのですか?」
「今だって、イルヴァがキスをしてくれたら俺は最高に気持ちがいいですよ」

 遠回しにそう言って誘うと、ランナルの手でしごかれ続けている肉竿をちらりと見ながらも、イルヴァはおずおずと上半身を伸ばしてランナルに唇を重ね合わせた。そのままぎこちない体勢で二人は舌をからませ合い、そしてランナルは自分の手のひらの中に射精した。
 そんなふうにじっくりとイルヴァに閨教育を施すこと、幾日。

「イルヴァ、ナカでもすっかり感じるようになりましたね。はしたない汁でとろとろだ」
「ランナル様、私……」

 昨夜、イルヴァは今までで一番切なそうな顔で暗闇の中のランナルを見つめた。昨夜は乳首と女の園の二点同時責めをしつこく行っていたのだが、イルヴァは言葉にならない強いもどかしさを覚えていたようだった。彼女は決して言葉にはしなかったが、その瞳にははっきりと彼女の欲望が見えた。「早く雄棒で、この処女穴を埋め尽くしてほしい」という欲望が――。

(食べ頃だな)

 これまでのイルヴァの痴態を思い返しつつも、ランナルは手元にあった書類すべての確認と添削を終えた。いくつか修正が必要だが、それらはすべて指示書にまとめて、ネロにやらせることにする。
 そうしてランナルはようやく庁舎を後にして、家路についた。帰宅するなり、執事にイルヴァの様子を確認する。よもや起きてはいないだろうかと心配していたが、今夜はすでに寝入っているとのことだった。

「明日からの四日間の休暇中は、極力イルヴァと過ごす。緊急でない限り、来客対応も控えたい」
「畏まりました」

 ハリーン家の本家から付き従ってきた老齢の執事にそう告げると、ランナルは遅い夕餉をとり、湯浴みをしてからイルヴァが寝ている寝台へ、彼女を起こさないように気を遣って横になった。


   ◆◇◆◇◆


「イルヴァ様、今夜はこちらをお召しください。旦那様からの贈り物です」
「贈り物? ま、まぁっ! こ、これは……っ!」

 次の日、イルヴァはランナルと一緒に、グントバハロンの首都であるエンフェリダクスの街を散歩するなどしてゆっくりと一日を過ごした。そして夜の湯上がり時、マーシーが差し出した白い箱に入っていたレースの下着を目にして、イルヴァは顔を真っ赤にした。

「は、破廉恥ではないのっ!」
「まあ、破廉恥ですね。でも夜の営みを楽しむ際に着るものとしては、わりと普通ですよ」

 着なくてもわかるその下着の面積の少なさ。面積が少ないどころか、ブラジャーには乳首をわざと出すための縦のスリットが入っている。パンティも同様に、一番大事な秘部にスリットが入っているために、布を左右にかき分ければ女の穴への侵入がたやすい。それでいてどちらにも、肩や腰に回る紐部分にはフリルとレースがあしらわれており、機能性は低いくせに見た目はたいそう凝った代物だった。

「ランナル様ってば、どこでこんなものを……っ!」
「高級ランジェリーショップとかですよ。夫婦仲が睦まじく、世継ぎに恵まれることはとても大切なことですからね。名のある家の方が使うことは珍しくありません」
「ランナル様は武家でしょ!」
「武家も同じです。ハリーン家は由緒正しい武家ですから」

 恥ずかしさをごまかすようにイルヴァはあれこれと言ったが、マーシーがいつもと何も変わらない態度で着付けを行うので、諦めて破廉恥な白い下着をまとい、その上からいつもどおり寝間着と、湯冷めしないように厚手のナイトガウンを羽織った。
 そうして寝室に向かい、いつものようにランナルを待つ。今日から彼は四日間の連続休暇で、基本的に日中も家にいる。イルヴァも彼のその予定に合わせて、この四日間は慰問楽団での練習を休ませてもらった。今日は散歩をしただけだったが、明日は雑技団のショーを見に行く予定だ。

(ランナル様は、本当に素敵な人だわ……)

 子供の頃からイルヴァは、ランナルの少し垂れた優しい目が好きだった。それなのに眉はややつり上がっていて厳かで、剣技が得意で立派な武人だ。
 結婚してからイルヴァは何度か陸軍の庁舎を訪れ、演習をしているというランナルの様子を見させてもらったことがある。指定の軍服を着て、低くて野太い声で部下たちを叱り、助言をし、大人数の部隊をまとめ上げるランナルの姿に、イルヴァの目はキラキラと輝いた。決してイルヴァには向けない、荒々しい口調と厳しい姿。静と動のようなランナルのギャップに、きっと自分はこの人を好きになるために生まれてきたのだろうと、心底思った。

(ありがとうございます、ウォンクゼアーザ様)

 寝台に腰掛けて夫を待つイルヴァは、両手の指を組み、胸の中で神に語りかけた。
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