Fahrenheit Ⅳ
あたしもスマホを取り出すと当然真っ黒で無機質な画面が目に入り、その画面に自分の無表情が映った。電源を入れると昨日の午後に啓からメッセージが入っていることに気づいた。
文面は一言。
”さっきはごめん。無視するようなことして”
今更―――このメッセージを見て何になるのだろう。スマホを握ったままあたしは顔を逸らした。
じゃぁもっとあたしを見て。瑞野さんではなく、あたしを―――
ぎゅっと握ったスマホからギリギリと音が立てたような気がした。
こんな嫉妬で醜いあたしは他の人にどう見えるのだろう。
「どうしました?迷惑メールとか?」と佐々木さんが心配そうに眉を寄せている。
「いえ、ちょっと知人から連絡があったので折り返し電話してきます。ちょっとだけ席を外します」と言って佐々木さんだけをテーブルに残しあたしは席を立った。
相手は―――啓じゃない。
あたしは何故か葵さんに電話を掛けていた。
『もっし~♪』と葵さんは数コールで電話に出た。相変わらずチャラい。
「葵さん、今晩の予定は?」
『瑠華ちゃんと呑みに行く予定だけど?』
「呑みに行くのは遅くてもいいですか?その前に少しドライブでもしませんか?」と聞くと
『ドライブ!?いいね♪瑠華ちゃんとドライブ♪』と葵さんの声が弾んだ。
「では6時40分頃に迎えに行きます」
『うん、いつでもいいよ~、待ってるね』チュッとリップ音を鳴らして通話は切れた。
あたしも大概何を考えているのだか。自暴自棄、というのかしら。でもお金で繋がっただけの軽い関係の人だったら付き合いは楽だ。
そこに変な感情は要らないから。