Fahrenheit Ⅳ


流石に少し酔っ払った。


月も流れゆく雲で隠れてきて、寒さだけが体を冷えさせる。


「ホテルに帰りましょうか」と切り出すと


「うん」と葵さんは素直に頷いた。


ホテルに帰り、カードキーを受け取ろうとすると当然キーは二つあるわけで。


手続きをするあたしの隣で、俯きながらあたしの手を取る葵さん。


―――?


「計算外の―――続き、しない?」


「―――え?」


計算外の続き―――?って何?


目をまばたいていると、葵さんは手を離し、


「やっぱいい。ごめん今のは気にしないで」と強引に笑い、一つだけキーを握って先に行ってしまう。


何だったのだろう、と首を捻る。


でも、今日葵さんに喋って良かった。決意できたことがある。


シングルホテルの部屋の中、それでもユーリの声が聞きたかった。あたしはティムに電話を掛けた。


適度な温度で調整されていた室温は寒かった外から入ってきた顔を一気に熱くさせた。コートを脱ぎハンガーに掛けながら、バスタブに湯を張り、その間靴のままベッドに寝転がった。いつ以来だろう。靴のままベッドで寝転がるなんて。NYでは当たり前だったけれど。


寝転がったままティムへ電話をすると相手は3コール程で出た。


「Hey,It's me.」


「Hey,Luye, what's up? Why are you calling me?(ルーイ、どうしたんだい?俺の所に電話なんて)」


「Well,What about Julyi? Is she asleep?(うん、ちょっとね。ユーリは?寝てる?)」


ティムの話に寄るとユーリはもう寝ている、とのこと。


「Actually, I’m out of Tokyo today, taking a little trip.(今日ね、ちょっと東京を離れて遠出してるの)」


「Why not take a break every once in a while?(たまにはいいんじゃないか?息抜きも)

Just like before, Luca did her best juggling work and raising a child.

As a mother and as a CEO.
(前もそうだったけど、仕事して子育てして、ルカは頑張ったよ。

母親として、社長として―――)


I know July is important to you, but there’s no need to force a reconciliation.Luye ’s feelings aren’t with you anymore.
(でも、ユーリのことが大切なのはわかるけど無理やり復縁する必要はない。ルーイの気持ちはもうマックスに向いてないから)」お湯の音が一段と小さく聞こえてきた。


「So where is it headed?(じゃぁどこに向いているの?)」


あたしの気持ち―――


あたしの気持ちは問わなくても分かる。


ずっとずっと啓だけに向いている。


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