Fahrenheit Ⅳ


やっぱ男か……と考えると今にも泣きそうになる。


「カウントダウンも正月も…とは言っても佐々木と緑川も一緒だったけど、ちょっとは距離が縮んだかなと思ったんだ」正直な意見を述べると


「俺のカウントダウンパーティーを断っといて柏木さんとカウントダウンだぁ?」と裕二が目を吊り上げる。


ダンスの練習中にキスをしたことはとてもじゃないが言えなかったが。


「か、カウントダウンは電話越しだったぞ」と、俺は釈明。


綾子は頭痛でもするように額に手を当て


「それは完全にダメね。散々気を持たせることをしておいて肝心なときに無視とか。そりゃ柏木さんも傷つくわ」


「気を持たせることはしたことはしてない……つもり」


「だけどカウントダウンと正月一緒に過ごしたんだろ?柏木さんだってお前が少しでも気を許してくれてるんじゃ、って思うよ普通」


二人のダブルパンチを食らって俺はノックアウト寸前。


「やっぱあの時顔を逸らしたのが間違いだったのかな……でも二村がこっちを見てたし……あんまり瑠華の方を見てると疑われるって言うか」


「それでも柏木さんが傷ついたのは事実」


綾子に指さされ、俺は項垂れた。


やっぱり―――傷つけたんだな、俺は。


「自棄になって今頃違うオトコと会ってたりな」


裕二が意地悪そうに笑う。


違う。瑠華はそんな軽い女じゃない。と否定したかったが、あのピンクの髪の男―――あいつが瑠華を(たぶら)かせて近づいていたなら?


それを考えるだけで不安で胸が押しつぶされそうになる。


風が強いのか、裕二の部屋の窓をガタガタと鳴らせ、時折女の悲鳴のような気味悪い音を立てた。


それが瑠華の悲しみであり、辛さであり、不安でもあるのだろうか。


「派閥がどうのこうのってね、大変なときだってことは分かるわ。でもね、二人の心の絆がしっかりしていたら必ずうまくいくものよ?その絆ってのをしっかり信じなさいよ」


綾子に言われて俺は苦笑い。


絆―――


信じる―――かぁ。


俺たち、すれ違ってばかり。近くなったと思ったら遠のいて。遠のいたと思ったら近づいて。でもまた遠のいてしまった。


でも、今度はいつ近づけるのだろう。


今回の件でもう絶対、俺は彼女の傍に居られない気がする。

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