Fahrenheit Ⅳ

話し途中、裕二がトイレに向かって行った。


それを機に


「大体なぁ、お前が瑞野さんが妊娠してることを隠したからこうなったわけで」


「―――え?知ってるの?」


綾子は目を開いて口元に手をやった。


「まぁ?色々あってな」


詳細は省いて言うと


「柏木さんから聞いた?」と綾子が探るように目を上げた。


「いや、瑠華は何も。とにかくなぁ、瑠華は瑞野さんを激務の秘書課からこっちへ異動させたわけだろ?それに彼女は経験があるし」


「そうよ、私は柏木さんから子供が居るってこと聞いてないけれど、確かに秘書課は激務だから異動させて柏木さんに任せたのは事実」


はぁ…


綾子はため息をついた。


「瑞野さんのお腹の中の赤ちゃんは二村くんでしょ?今それを知られるわけにはいかないって」


「それもそうだ。二村のことだ。緑川が絶対的切り札な今瑞野さんの子供はあいつにとって不利以外何もならない」


「それを懸念して柏木さんは瑞野さんの意見を尊重して外資に異動させたのよ。このことを知ってるのは私と会長だけ」


瑠華は―――瑞野さんを守ろうとしていた。けれど瑞野さんが二村への当てつけとばかりに俺と仲良く振る舞っている以上、瑠華は誤解したまま。サイアクの悪循環だ。


「何!やっぱ瑞野さん妊娠してたの!?」とトイレから帰ってきた裕二に運悪く聞かれちまった。


嗚呼、また負のループ?


瑞野さんが妊娠してるって事実はできるだけ知っている人数が少ない方が良かったのだが。


「相手はやっぱ………二村?」と裕二が探るように聞いてきて


「当たり前だろ。俺の子じゃねぇ。及んでもねぇっつのに」


「だよなー、柏木さん一筋のお前が今更裏切るとか考えられないしな。いくら雰囲気が似てるからと言って」と裕二は腕を組みソファに深く背を預ける。


俺は携帯を取り出し、送ったメッセージは既読にはなったものの未だ返事のない瑠華へのメッセージを読み返した。


何度読み返しても、返信がある筈なのいのに。


アプリの通知とか来ると過剰に反応しちまうが、しかし瑠華からのメッセージじゃないと落ち込む俺。

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