Fahrenheit Ⅳ

ユーリを車の助手席に乗せ、シートベルトを締めているとき、しまったと思った。ユーリの年代だとこの国ではチャイルドシートが義務つけられている。勿論アメリカでもそうだけど。


捕まるわけにはいかないから、私は近くの子供の衣服やベビーカーやその他ベビーグッズが売っている大手のショップへ向かった。


たった一か月の為にチャイルドシートを買うのに少し悩んだが、東京の街はとにかく人が多い。車移動が増えることを考えるとやはり必要だろう。それに使い終わっても想い出として残しておけば、いつでもユーリに会える気がした。


それを見ればケーキの箱を思い出せる気がしたから。


店に並ぶたくさんのチャイルドシートにユーリは楽しそうに座ったり移動したり。


結局、ユーリが一番気に入った、かつサイズの合うチャイルドシートを購入して車にセットするとユーリは特に嫌がることなくチャイルドシートに収まった。


「It's more comfortable than the seat in Dad's car.(パパの車の椅子より座りやすい)」とユーリは満足そうに笑ってくまちゃんを宙で動かせて……泳がせている振りかしら、特に抵抗らしい抵抗をみせず少しばかりほっとした。中にはチャイルドシートを嫌がる子がいると聞いたこともあるし。それとも海外製より日本製の方が性能がいいのかしら。


そこから20分程であたしのマンションに辿り着いた。


マンションには相変わらずウチヤマさんがカウンターに居て、小さなユーリの手を引いて「こんにちは」と挨拶するとウチヤマさんは「おかえりなさいませ」と言いながらも『おや?』と言う表情を浮かべたが、すぐに微笑ましい何かを見る笑顔を浮かべた。


ウチヤマさんはあたしに娘がいることを知っている。


それがこの子だと見抜いたに違いない。


あたしもウチヤマさんに笑い返した。

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