Fahrenheit Ⅳ

紫利さんは買ってきてくれた材料でパンケーキを作りながら、その隣であたしはマックスとの過去を洗いざらい喋った。NYで結婚していたこと。そこでユーリを産んだこと。その後は泥沼の離婚対決になったこと。紫利さんは口が堅い。誰かに言いふらすことは絶対にないだろう。それどころか同情もしてくれた。


「そう、大変な思いをしたのね。なのに全然知らなくて」


「いえ、意図して隠してたわけではないんですけれど、マックスと結婚してたのは私の汚点だったので」


「汚点だなんて……まぁ浮気癖が抜けない男と一緒にいるのは辛いけれどね。ね、あの子名前は何て言うの?」


「ユーリです」と言うと


「Mom, it smells delicious.(ママ、美味しそうな香りがしてきた)」とユーリがくまちゃんを持って走ってきた。


今、まさに紫利さんがフライパンの上でパンケーキを焼いてくれている最中だ。


「You might get burned, so please stay seated on the sofa, July. My name is Yukari. Please call me Yukari.
(火傷すると危ないからソファに座っててね。ユーリちゃん。私は紫利。紫利って呼んでね)」とこれまた色っぽくユーリにウィンクをすると、ユーリはその言葉を守りコンロには近づかなかったけれど、その代わりあたしのスカートの裾を引っ張り


「ABeautiful girl. Coco is pretty too, though.
(きれいなお姉さん。ココお姉ちゃんもきれいだけど)」


「Yeah, she’s really pretty and kind. She’s like an older sister to Mom. It’ll be ready soon, so just wait a little longer.
(そうね。とってもきれいだし優しいのよ。ママのお姉さんみたいな人。もうすぐでできるから待ってて)」と言うとユーリは大人しくソファに戻っていった。


「ふふ」紫利さんが小さく笑い声を漏らして「すごく可愛い子ね。瑠華ちゃんに似てる」と紫利さんが言った。


ユーリが、あたしに……似てる…?

< 125 / 130 >

この作品をシェア

pagetop