Fahrenheit Ⅳ

レトルトの梅がゆを全部食べて、その後風邪薬を飲ませ、布団に横になるよう指示すると葵さんはすんなりあたしの指示に従った。


寝る前に熱を測ったら38℃3分。インフルエンザじゃなければいいけど。


明日になっても熱が引かないようであれば葵さんを病院に運んでいこう。実費になるだろうから相当いくだろうけれど、葵さんが体調を崩してたことを知らなかったあたしにも責任がある。あたしが払おう。


葵さんの額に熱を冷ますシートを張ると、葵さんは思ったより疲れていたのだろうかすぐに眠りに入ったようで寝息が聞こえてきた。それはとても安らかなものだった。


あたしは、と言うと葵さんが食べた梅がゆの器を洗い冷蔵庫の中を少し整理し、このまま帰ろうとかと思った。しかしまだ葵さんの病状が心配だったからすぐに帰ることはできず、熱を冷ますシートを何時間ごとにに変えて……変えて…



―――――

―――


「おはよ、瑠華ちゃん」声を掛けられるまで自分が寝てしまったことに気づかなかった。


びっくりして飛び起き切ると、葵さんは顔色も良く声も昨日のダミ声ではなかった。


え――――あたし、もしかして寝てた?


薄いブルーのカーテンから眩しい程の朝日が差し込んでいて腕時計で時間を確認すると朝の8時だった。


何てこと。


思わず額に手をやると


「いや~あんまり気持ちよさそうに寝てたから起こすの可哀想かなって思って…でも寒いだろうから俺の布団に入れたの。


それにすっげぇ可愛い寝顔だったからさ」


…………


ってことは昨日あたしは葵さんと一緒の布団で寝たってこと?


念のために服の乱れがないか確かめてみたが、きっちり着込んだカーディガンのボタン一つ外れていない。


何もなかったことが分かったにしても、ああ、なんてことしでかしたのあたしは。思わず額を覆っていると


「瑠華ちゃんの看病のお陰で元気になったよ」と葵さんはガッツポーズ。確かに声に張りが戻ったし顔色も悪くない。熱も測ったが36℃8分まで下がっていた。


すごい回復力ね。若さかしら。と言ってもあたしと一つしか変わらないのに。


「ところで俺に電話してきたってことは空汰に何かあったの?」


そうだった。本来の目的は二村さんと緑川さんが距離を置いた、と報告したかったのだ。葵さんの風邪騒ぎですっかり忘れていたが大事なことだ。


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