Fahrenheit Ⅳ

ホテルを出て駐車場に向かうまで俺は空を見上げた。空は紫利さんがくれたマフラーのようにきれいな藍色をしている。最近はめっきり日が暮れる時間が早くなかった。ジャケットの前を合わせて首をすぼませ駐車場に向かい、ディーラーで借りてきた車に乗り込むと、俺は特に寄り道もせず家に帰りついた。


その後はシャワーを浴び、簡単なつまみを作りビールを飲みながら名前も良く知らない若手芸人が出ているくだらないお笑い番組を見て、その夜を過ごそうと思った……


ビールを二本程飲んでそろそろ焼酎に変えるか、と思い立ってソファから腰を上げると、その足取りは軽くダンスのステップを踏んでいた。最近の猛特訓の癖が抜けていないのか、それとも忘れないように無意識なのか…


俺は瑠華を抱きしめるようにホールドを決め、腕を広げた。想像の中、俺の腕の中で瑠華が俺の手を取り微笑んでいる。


「ワン、ツー、スリー」一人カウントを取りながら、瑠華の幻想を見ながら俺は一人踊った。


マイ・フェアレディの『踊りあかそう』ではないが、俺はそれから夢中になって踊った。


瑠華のぬくもり、香りを忘れないように―――


テレビからは大して笑えない番組が虚しく流れているだけだった。


次の日、この日はいよいよ31日だ。


裕二の家に夜6時集合と言う時間帯だったからか、この日は遅くまで寝ていた。思えばほぼ毎日仕事で久しぶりにこんな時間まで(昼近く)熟睡した。頭は妙にすっきりしていた。


歯を磨いて髭を剃りシャワーを浴びて、といういつものルーティーンをこなして俺は近くのスーパーまで歩いて行った。


正月にまで自分で料理をする気がない。誰か来るのなら作るが、どうせ一人だし。それなら総菜のいくつかを買いだめしておいて朝から、或いは昼から?酒を呑んで一日だらだらするのもいい。


実家はそれ程離れていないが、正月だというのにここ数年帰っていない。


やることと言えば『孤独のグルメ』を一気に見てその後『格付けチェック』を見ながら酒を呑み、一人あーでもないこーでもないと独り言を漏らすのがここ数年のルーティーンだ。(てか何気にガクト様すげぇな!!)来年こそ瑠華が隣に居るかと思った。テレビを見ててもいいし、初詣に行って屋台で買い食いして、っというのも想像したが、その想像は今年の中頃で諦めなければならなかった。


そう言えば、緑川と二村は仲直りしたのかな?


まだ仲直りしていないのならいいザマだ。


ちょっとだけ緑川に連絡してみようかと思ったがやめた。どうせ年始の新年会で会うしな。その時にでも様子を見りゃ分かるだろう。つまりは面倒だったわけ。


寂しい年末を迎えようとしているのに他人にかまけている余裕などない。

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