Fahrenheit Ⅳ
マンションに帰りつくと、俺はコートを乱暴に脱ぎ捨てベッドに潜り込んだ。
布団の中で声を押し殺し泣きながら、くるまっていたらいつの間にか眠りについていたようだ。
泣き疲れて寝るってホントにあるんだな。少女漫画みたいな出来事だ。
バイブ―レーションにしたままで、しかもリビングに置きっぱなしになっていた携帯に何件もの裕二の着信履歴が残っていた。
しかし掛けなおす気にもなれない。
気付いたら夜も11:30。
え゛!嘘だろ!
俺、そんなに寝てた!?
そういや年越しそば食ってねー!
今から蕎麦を茹でて出汁を取って……ダメだ、間に合わん。
仕方なしに俺はキッチンカウンターの上の扉を開け、万が一の非常食として取っておいたカップ麺の数々を眺めた。
「あ、あったあった。蕎麦~」とカップ蕎麦を見つけたものの、今年の9月で賞味期限切れてるジャン。
でも、まー大丈夫だろう。三か月ぐらい、どうってことないだろ。
ケトルで湯を沸かし三分待って、手を合わせ「いただきます」と言いながら蕎麦を啜る俺。
やっぱ寂しい。
って言うか惨め??
何となくテレビを付けると紅白も終わっていて、今はどこぞの寺が鐘を鳴らすのを待っている状態だ。そこに溢れる人の波を見て、寒い中良く待てるよな、なんて変な所で感心。
していると、またも裕二から電話が…
もう十分前だし俺が駆け付けたところで間に合わないだろう。
それにしても鬱陶しいな。
いい加減にしろ!という意味で電話に出ると
『啓人!ヤッタぜ!綾子にプレゼントを渡して仲直りできた!』
「おー、そっか良かったな。てかまだカウントダウン前ジャン?」
『桐島が来る前に二人っきりのとき渡したらすっげぇ喜んでくれてさ』
「まさかさっきの鬼電はその報告?」
『うん』裕二はあっさり言う。
だから言ったろ。大人なんだし何とかなるって!そんなことで電話してくな!
まぁ何とかなってない自分が言うのも難だが。
「まぁ良かったな」
『ああ、啓人と柏木さんにも手伝ってもらったって言ったら二人にも感謝してたぜ』
裕二……そこは一人で一生懸命選んだとか言えよ。お前ってそんな不器用だっけ?それとも惚れた女には嘘をつけないタイプ??
ま、綾子本人が喜んでるのなら良かったのか??