Fahrenheit Ⅳ
Newyearのはじまり。
♥Ruka♥
クリスマスから三度程マックスから電話があった。無視してもいいものの、ユーリが彼の手元に居る今そうもできず電話に出ると
「Countdown?(カウントダウンの件は?)」としつこく聞いてくる。
「I have no intention of counting down with you.(あなたとする気はない)」ときっぱり断ることが続いた。
流石に四度目の誘いは無かった。
NYに居た頃、あたしたちがまだ完全に仲が壊れる前、まだ喋ることがあまりできなかったユーリを交えて三人でカウントダウンしたっけ。もう随分昔の話だ。あたしはそれを記憶の引き出しに入れっぱなしにしていたが、ふとした瞬間それを覗き込みたくなる。
葵さんとのカウントダウンも断った。疲れてるから早く眠るという嘘をついて。
大体渋谷や新宿でするカウントダウンには興味がない。人だけが多くて騒がしいだけだもの。想像だけれども。
勿論、あたしのマンションに葵さんを招き入れることもなければ、あたしが葵さんのアパートを訪ねることなんて念頭にない。
というわけであたしは一人静かに日付が過ぎるのを待つつもりだった。
クリスマスに心音が持ってきてくれたシャンパンが未開封だったからそれをグラスに注ぎ入れ、カーテンを開けるとそっと外を窺う。
青や黄色、グリーンに赤。街は色とりどりに輝いていた。それはまるで宝石箱の中を彩る宝石のように見えたが、あたしにはまやかしのイミテーションにしか見えなかった。それも酷く出来の悪い。
啓と二人っきりで見たのなら―――それはとどんな宝石より輝かしいとびっきりの宝石箱に見える気がした。
そんなことを考えながらシャンパンを飲んでいると着信を報せた。
着信は非通知になっていて
一瞬眉をしかめ出るかどうか迷ったけれど、何となく予感めいたものがあったのかしら。
あたしは出ることに決めた。
「はい」少しばかり警戒心をあらわにして電話に出ると
『瑠華―――?良かった、出てくれて』
啓―――――?
「啓―――?」どうして……?どうしてあなたはあたしがあなたのことを考えているとき電話をしてくれるの?
『うん、ごめんね。俺のメモリで電話すると出てくれないかも、って勇気がでなくて』
勇気―――?そんなもの必要ない。啓からの電話なら迷わず出たのに。
でも可愛くないあたしは
「出ますよ、普通に」とまたもそっけなく答えてしまった。
『そう…なの?』
啓の戸惑ったような声を聞いて、喉の奥でくすりと笑みが浮かんだ。
啓も―――色々悩んでいてくれていたのだ。あたしだけじゃなく。
「それよりどうしたのですか、こんな夜更けに」
『いや……今、誰かと―――、一緒?』
それは―――マックスとユーリと一緒に居るのか、それとも葵さんと居るのか、探られているのだろうか。
「いいえ、マンションで一人ですが」疑われるのは心外だが、それ以上に無性に嬉しかった。
『きょ……今日は何をしてたの?』
啓は何を言いたいのだろう。意味が分からず
「今日ですか?今日は紫利さんと銀座でお買い物を。その後紫利さんのご主人も一緒に銀座の料亭かも鶴でお食事を」
と正直なことを答えた。