Fahrenheit Ⅳ

宣言通り、紫利さんが……というかご主人が支払いを済ませてくれた。


「あの……少し払います…」と流石に悪いと思い財布を取り出そうとすると


「いいの、いいの。ここは年長者に任せて」と紫利さんと同じ動作でやんわりと押し戻される。夫婦は、どこか似るところがあるのだろうか。あたしとはマックスと似てるところがない、と思いたいけど。


「それでは、ご馳走になります」ときちんとお礼をすると


「若いのにしっかりした子だねぇ」と若干ろれつの回らないご主人が赤い顔で笑った。


「そうよ、自慢のお友達なの」と紫利さんが誇らしげに言ってくれて、あたしは思わず恐縮してしまった。


”友達”と言ってくれて嬉しかった。


そんなワケでお店の前で二手に別れてそれぞれタクシーに乗った。


紫利さんからいただいたおせち料理を膝に乗せたものの、それはやはりずっしりと重かった。


まだ中身は見てないけれどこれを誰かとシェアできればな……と思ってあたしは佐々木さんと緑川さんを誘ったのだ。


そこに啓もいれば言うことなしなのに。


ふぅ……小さくため息が漏れた。


家に帰りついて紫利さんに今日のお礼を述べると、お風呂に入った。たっぷり張ったバスタブの湯に、これまたたっぷり時間をかけて入って身も心も満たされた。ついでにお腹も。


その後はこれまた念入りにスキンケアをして髪を乾かすと、もう夜は11時半を過ぎていた。


あと三十分で日本は年が明ける。


そんなことをぼんやりと思っていた時だった。


啓から電話が掛かってきたのは。


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