Fahrenheit Ⅳ

「ところで、緑川さん二村くんと一緒に居なくていいんですか?」


と何も知らない佐々木がシャンパンをゆっくりと飲みながらのんびりと聞いた。


半分程一気飲みしていた俺は危うくグラスからシャンパンを吹き出しそうになった。


佐々木、その話は今禁句……と思ったが


「喧嘩したんです。クリスマス翌日から」と緑川が頬を膨らませてつんと顔を逸らせる。


「え?そうなんですか?すみません、変なこと聞いちゃって」と佐々木が顔を俯かせた。


「佐々木さんのせいじゃないです。悪いのは二村くん」


「……あの……何で喧嘩しちゃったんですか?」


ぅおい!佐々木!これ以上何も聞くな!ハラハラした面持ちの俺の横で


「緑川さん、ローストビーフ美味しそうですよ、どうぞ」と不穏な空気にならないよう瑠華も気を遣っているのか緑川の小皿にローストビーフをとりわけている。


「ありがとうございます」と緑川は礼をいいつつも「どうもこうも、彼、浮気してたんです」と緑川のあけっぴろげな愚痴は止まらない。


嗚呼、必死にこっちが気を回してるってのに!


「浮気!あの二村くんが!?だって緑川さんにべったりだったじゃないですか」と佐々木が目を開く。


「それは見せかけって言うかー」


俺と瑠華がハラハラしているであろうに二人の話はどんどん進んでいく。


緑川ってこんな自分の負の部分をあれこれ喋るヤツだっけ?何て言うの、プライドが高いから浮気されたとか口が裂けても言わなさそうなのに。しかも相手も知ってるヤツだし。でもプライド云々の前に、誰かに話を聞いてもらいたいってぐらい傷ついてるんだな…


「まさか携帯を見たんですか?」と佐々木が聞き


「ううん、見てないです。でも目撃した、って言うか……」


目撃したって言うのは完全なる緑川の嘘だろうが。


「うわっ、サイアクですね」と佐々木が目を覆う。「でもでもたまたま知り合いだったり」


ナイス佐々木!このままこの話題が別方向に向かえば……と願っているのも虚しく


「だってその女、二村くんが前付き合ってた人で今もSNSで繋がってるんですよ。あ、でも相手の女のSNSには鍵がついてて葉月は見られないけれど」


「緑川、写真SNSに載せるなよ」


「載せませんよー、二村くんだって見てるだろうし」


「わ、私もSNSやってます」


瑠華が挙手した。


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