Fahrenheit Ⅳ

後に残された俺たち二人。


「柏木さんの前の彼ってどんな人だったんでしょうね。話すの相当嫌そうでしたが」


「さぁ、俺は詳しくは知らねーよ」


嘘。めちゃめちゃ知ってるし何ならそいつに会ってるし!てか佐々木も会っただろうに気づかなかったのかよ。


鈍感だなぁお前は……可哀想なものを見る目つきで佐々木を見ていると「何なんですか」と佐々木が疑いの眼。


「いや、柏木さんもさ、苦労しただろうし、今はそっとしておいてやろうよ。特に恋愛面では」


「恋愛面では……?部長……何か知ってるんですか」


ギクギクぅ


「し、知らないよ。彼女は何も語らないし。そもそも俺らプライべートな話をするような仲じゃないだろ?」


「それもそうですね」


おい!変な所で納得するなよ!


やがて瑠華と緑川が戻ってきて「ピザ発注しました~」と緑川が両手を挙げて走ってきた。


瑠華はそのついでなのか


「私はお手洗いに」


とソファには座らず


これってチャンスじゃね?


「あ、俺も。案内して?」と言うと瑠華は一瞬だけ目を細めたものの「分かりました」と頷いた。


あの視線の意味は何?知ってるくせに、とでも言いたげだったのかな。でも知らないフリをするのが自然だし。


勿論トイレなんて口実で、案内してもらうまでに


「ねぇ、次の練習いつにする?」と俺はずっと聞きたかったことをようやく口に出せた。


瑠華は少し考えたのち「そうですね、明後日などいかがですか?確か香坂さんは三が日は挙式が入ってないと仰ってましたし。あまり日が空くと感覚を忘れてしまいそうですし」


3日。


「了解♪」


「その日は本番用のドレスを着て練習しましょう。じゃないと本番に対応できないかも」


なるほど、それはいい案だ。しかも瑠華のドレス姿も見られる。まさに一石二鳥。


「ではお手洗いはお先にどうぞ、あまり二人でここで長居していて佐々木さんに疑われでもしたら」


「そ、そーだね」


別に用を足したくて来たわけじゃないけど形だけでもトイレに入り、トイレを出ると瑠華の姿は無かった。


分かってたことだけどね、ちょっと寂しいって言うか。クスン……


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