Fahrenheit Ⅳ
それから届いたピザを食べ、ビールやワイン、日本酒なんかを開けたら場がぐだぐだしてきた。
佐々木は完全に潰れて床に座り込み、ソファに突っ伏して寝ているし緑川もうつらうつらと船をこいでいる。
「今日はお開きってところですかね」と瑠華が言い出し、テーブルの上に散らかった皿やグラスを片付け始める。
俺もそれを手伝った。
食べ残したピザやおせちを皿に移しラップをして冷蔵庫に入れ、皿やグラスを食洗器に入れている瑠華を手伝う。
こんな―――何でもない日常。こんな小さな出来事。しばらく忘れかけていた感覚にさえも嬉しささえにも覚える。
「瑠華―――今日は誘ってくれてありがとうな」
「こちらこそ、来ていただいてありがとうございます」
ありがとうございます―――なんて……そんなこと……
ちょうど瑠華はキッチンの下に位置している食洗器に皿を入れているところでカウンターからは影になって見えない筈。
今なら―――
と近づいてみると
「柏木補佐~……今何時ですかぁ」と緑川が寝ぼけた声で聞いてきて、瑠華がふと顔を上げる。部屋の壁掛け時計を見ながら
「夜の7時半ですね。もうそろそろお開きにしましょうか、と喋っていたところです」
「え?もぉ?一日って早いな」と緑川はどこかつまらなさそうに唇を尖らせ、
「またこうゆう機会作りますよ」と瑠華は苦笑い。
「ホントに?」と緑川がカウンターから身を乗り出した。よっほど今日の出来事が楽しかったのか満面の笑みが浮かんでいる。
「ええ、ですので緑川さんはまたお着換えになってください。タクシーを呼びますので、それで帰ってください」
着替え??
「えー、またあのダサいジャージですか?」
ダサいジャージ??
「仕方ありませんよ、二村さんの目をごまかす為です」
緑川は口の中でしばらくムーと唸っていたが、二村の名前を出されたら従わざるを得ないって思ったんだな。
大人しく瑠華に案内されて、リビングを出て行った。
さてと、こっち(佐々木)も起こさなきゃな。