Fahrenheit Ⅳ

食べることは好き。でも隣に愛しい人がいればもっとおいしく感じるだろう。今はまだ想像することしかできないのがもどかしい。


葵さんはあたしが持っていたたい焼きに勝手にかじりつくと


「お、確かにうまい」と頬を綻ばせた。


「ちょっと、勝手に何するんですか」と目を上げると


「だってあっちの若いカップルも食べさせ合いっこしてたよ」と葵さんは高校生と思われるカップルを目配せ。


確かに少し離れた場所で彼らはそれぞれ一つのタコ焼きを互いの口へ入れていた。


「ほら、あっちも」と指さされたのは高校生以上、大学生ぐらいのカップルに思えた。


どこもかしこも真剣に参拝する、と言うよりこの縁日を楽しみに来ているように見える。


さすがに年配者の方は熱心に参拝に来ていたが。


「ねね、俺たちもカップルに見えるかな」と葵さんが聞いてきて、あたしはうんざりしたようにため息を吐きながら


「さぁ」と答えた。


何故、人は年ごろの男女が一緒に居るとカップルに思われるのだろう。


そして思うのだろう。


でもふと思う。


あたしたちは他人から見たらどう見えるのか。


カップル?友達?同僚?


いいえ、そのどれも当てはまらない。


あたしたちは単なる協力者。それ以上でもそれ以下でもない。


でも最近あたしは葵さんを協力者以上、彼があたしの内側に入ってきている気がする。


それを押し戻したいのか、それともすんなり受け止めようとしているのか、自分自身にも分からない。

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