Fahrenheit Ⅳ
しかし、全て練習通りうまくいくわけではなかった。途中慣れない水の中で瑠華が床で足を滑らせそうになったのを察した俺は、慌てて瑠華の手を持ち直し、高く持ち上げた。
曲は『美女と野獣』に入っていた。
~♪Barely even friends Then somebody bends Unexpectedly
(友達でもない関係を誰かが突然変えてしまう)
~♪Just little change Small to say the least
(言葉にもできない微かな変化)
そう、俺たちの仲に少しずつ変化があるのなら。
瑠華は腕は伸ばせる、と言っていたから。どこまで伸ばせるか分からないが不自然に思われない程度に。瑠華が水の中で背伸びをする気配を感じたが、それでも腕を伸ばし続けた。
キツイかな、と思って心配の顔を浮かべて瑠華を見ると彼女は即興なのか、俺の頬をグローブ越しに撫でてきた。
まだいけるってこと?それともこの即興に感謝のシルシ?どっちか分からないけれどグローブ越しでも分かる、瑠華の熱い体温が。
ダンスに集中しているからなのか、それとも違う何かの感情―――?
それでもまだ安定しない足元で俺は即興でスローターン。瑠華がそれに察して軽くドレスの裾を持ち上げると俺の動きについてきた。流石だな、慣れてる。
曲は終盤、というかメインの部分のメロディになって問題のクイックステップになる直前俺は溝から上がって瑠華を引き寄せた。
さぁ、ここからが勝負だ。曲は「Sing Sing Sing」のjazz。