Fahrenheit Ⅳ

「しっかし柏木さん凄いな~、前も見たけどドレスもすっげぇ似合ってるし」と裕二は言ったが、その視線は瑠華の胸元や細い腰からヒップの辺りを彷徨っている。


「どこ見てんだよ!」思わず裕二にチョップをかますと裕二は痛そうに顔を歪め


「仕方ないだろ、男のサガってもんだ。ほら、俺以外だって男どもの視線は柏木さんのドレス姿にくぎ付けだ」


裕二に言われて辺りを見渡すと、確かに多くの男の社員は瑠華のドレス姿に視線をやっていた。


「柏木補佐って意外と胸あるのな」

「腰、細いとは思ってたけど、あそこまでとは」


カー!!!!!


”俺の”瑠華を変な目で見るんじゃねぇ!!


今すぐ叫びたい気分だったが、裕二に羽交い絞めにされてそれはできなかった。


「どうどう、今柏木さんを庇ったら二村にまた変な目で見られっぞ」


ま、まぁ確かに…


当の二村もいつの間にかちゃっかり瑠華に近づいていて


「柏木補佐、それ……」と胸元に手をやり


「先日もいいましたがホンモノです」と瑠華がちょっと目を吊り上げる。


「あはは~、軽いジョークですよぉ。それにしても凄かったですねぇ」と緑川と離れている状況なのに随分余裕があるな。何を考えてるんだ?


そう言えば緑川はどうしてるんだろう。


会場内をキョロキョロしていると、緑川は出入口の近くでつまらなさそうにオレンジジュースの入ったグラスに口を付けていた。


「わり、ちょっと」俺は裕二から離れると緑川に近づいた。


「緑川」俯いたままの緑川に声を掛けると緑川は俺の声に反応したのかぱっと顔を上げた。その表情はあまりすぐれないものだった。


「部長……ダンスステキでしたね。良かったです。柏木補佐もすごくきれいで」と何とか声を絞り出している感じだ。


「サンキュ。二村とはあれから……」


「相変わらずしつこいですけど、今日はあまり…」


だから壁の花になってたってわけか。緑川は本社に来てまだ日が浅い。あまり親しい友人も居ないんだろう。


まぁ?二村もここでしつこく緑川につきまとってたら何かあったと他の社員に勘繰られる恐れがあるからな、下手な動きはできないと見える。


俺は瑠華に群がる男どもが気になるが、そのうち桐島がシャンパングラスを瑠華に持って行って近づいて行って男どもは少しだけ後退した。


ナイス、桐島!そう言えば姿が見えないと思ってたがカマ―ベストにギャルソンのエプロン姿だったから今日は裏方に回っていたに違いない。


「なぁ、いつまで続けるつもりなん?二村と離れるって」


と俺が聞くと緑川はまた俯いた。

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