Fahrenheit Ⅳ

「柏木補佐、お気持ちは嬉しいんですが、柏木補佐のドレスも濡れちゃってるじゃないですか」と瑞野さんのこれは本心だろうな。確かに水を張った会場でのダンスで瑠華のドレスの裾は濡れている状態だ。


「この温度ならそれ程時間が掛からないうちに乾きますよ。それよりもあなたは早く着替えてきてください。新婦用の控室に着替えが置いてありますので」


と瑠華が綾子を呼び寄せると


「瑞野さん、行きましょうか」と綾子は瑞野さんを連れて場を去った。


後に残された俺と瑠華、そして二村。


「二村、お前の女ぐらいてめぇで面倒見ろ」と俺はわざと二村の肩にぶつかるようにしてその場を離れた。


瑠華はすぐその場から離れるかと思ったが、近くにあったウィスキーボトルからグラスにウィスキーを注いでいた。


同じく二村にもそれを注ぎ入れ、それを手渡している。


あの二人を残して遠くへ行くこともできず、話しかけてきた女子社員に適当に相槌を打ちながら俺は二人の様子を窺った。


二村はどこか苦笑をしていて瑠華と軽くグラスを合わせて乾杯をし、グローブを取り去ると


ビュッフェ形式になっているクロスの掛かった長いテーブルから塩をひとつまみ。


え?まさか二村にそれをぶちまけるとか??と心配していたが、瑠華はそれを手に取り手の甲に乗せていた。


二村は相変わらず肩を大げさに竦めたり手を振ったりでやや大仰な仕草で苦笑いを浮かべ瑠華に喋りかけている。


瑠華はそれに無表情で答えたり頷いたり、


やがて手の甲に乗せた塩をあの赤い唇から出したこれまた色っぽい舌を出し一舐め。


え、エロ……


じゃなくて!


それをウィスキーで流し込み、一気にウィスキーを開けるとそこら辺をうろうろしていたウェイターにグラスを返し、その場を去った。


な、何話してたんだ?


俺は二人が何を話していたのか気になり過ぎて女子社員が何か喋ってきたがそれを適当に受け流し、二人が離れた今すぐ瑠華の元に走り寄りたい気持ちを必死に抑えた。


二村―――


お前のせいで二人の女が喧嘩をする、という事態を招いておいて平然と瑠華と喋っている。


余裕に見えたが、瑠華と同じようにウィスキーを一気に飲み干すと次の瞬間


ガタガタっ


派手に音がしてビュッフェ形式のテーブルに倒れこんだ。


何だ!?と一瞬思ったが


どうやら酔ったようだ。


近くに居た社員に支えられながら軽く手を挙げ、ウェイターが持ってきた水を一気に飲み干している。


二村にとって新年会は地獄の





はじまりだ。




さぁどうでる?





二村。



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