Fahrenheit Ⅳ


空が僅かに夜のベールを被り暗くなり始めた頃、新年会は終わりを迎えようとしていた。


親父の言葉で締めの挨拶が行われ、会場に居た社員たちが散り散りに帰って行く。ビュッフェ形式で食べ残った食事も片付けられている中


「部長、柏木さんは?」と佐々木が今更になって聞いてきた。


「体調不良で先に帰ったみたいだ」と答えると


「え!?大丈夫ですかね!しばらく濡れたドレス姿だったから風邪を引いちゃったとか」


その言葉を近くで聞いていた瑞野さんが


「え!あたしに服を貸してくれたから柏木補佐が……」と口元を覆う。


「大丈夫だろう、すぐ帰ったみたいだから。体調悪かったら病院行くだろうし。もういい大人だし」とやや冷たい物言いに聞こえたかもしれないが、そう言う他ない。


そんなことを考えていると、しとしとと窓の外で静かだが存在感のある音を立てて雨が降り出してきた。


「あれ…雨?今日は一日晴れるって予想だったのに」と佐々木が不安そうに窓の外に視線をやる。「柏木さん、無事に家に着きましたかね」


俺はもう一度瑠華の携帯に電話をしたがやはり先ほどのアナウンスが流れるだけだった。


一言も声を発することなく携帯をスーツに仕舞うと


「柏木さんに繋がらないんですか?」と佐々木が益々心配そうに声を上げる。


「大丈夫だって。明日になったらケロっとして出社してくるだろ。俺らも帰ろう」


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