Fahrenheit Ⅳ
あたしが入っていくと、リビングと思われる場所でマックスとユーリはあたしがあげたくまちゃんのぬいぐるみで言葉通り遊んでいる最中だった。マックスがくまのぬいぐるみをふらふらさせ、ユーリの頭の上に乗せているとユーリはキャッキャと可愛らしい声をあげていた。
マックスがいち早くあたしの存在に気づくと
「Ruka!」とくまのぬいぐるみをユーリに手渡し、こちらに向かってきた。
「What's up? You're looking pretty fancy—are you going to a party or something?(どうしたんだい?随分ゴージャスな格好だけど、何かのパーティー?)」
「It's the company's New Year's party.(会社の新年会よ)」そっけなく言うとユーリもあたしの存在に気づき「Mom!」とくまちゃんを抱き締めながら走ってきた。
マックスは前触れもなくあたしを抱きしめてきて
「You're freezing. What's wrong? Did something happen? You don't look well.(体が冷え切っている。どうしたんだい?何かあった?顔色も悪い)」とあたしの顔を覗き込んできた。
Stop.(やめて)心の中ではそう言っているのに、何故かその腕を拒めなかった。マックスの胸の中は温かった。
あたしは―――誰かのぬくもりが欲しかったのか。
誰でもいいから―――?
違う。
あたしはマックスの胸を押し戻すと今度はユーリがあたしの足に抱き着いてきた。
「Mom, I missed you.(ママ、会いたかったよ)」
そう、求めていたのはこのぬくもりだ。
温かく柔らかく、どこか甘い香りの漂うこの可愛い子。
あたしは何も言わずユーリを抱き上げると、コートから少し覗いたドレスを目にしたのか
「Mom, you look beautiful, just like a princess.(ママ、お姫様みたいできれい)」とユーリは屈託なく笑った。
「( Mommy's little princess, July.(ママのお姫様はあなたよ、ユーリ)」柔らかいほっぺたにキスを落とすとユーリはくすぐったそうに笑い、あたしの頬にもキスをくれた。