財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
***(惺也視点)

 李茉が『愛華さんが愛人……本命の彼女じゃないってこと?』と口にした瞬間、胸の奥に冷たいものが落ちた。

 契約結婚を提案したのは自分だ。だから誤解されても仕方ないのかもしれない。
 それでも──李茉にだけは、そんなふうに思われたくなかった。

『愛華とは何の関係もない』そう言いながら、李茉の瞳が揺れているのに気づき、誤解を解くだけでは足りないな。ここまで来たら、全部話すべきだと腹を括った。

「マリーは、犬の名前だ。俺が高校卒業してから飼い始めた犬で、名前の語源はお前だ」
「……え?」

 李茉の大きな目が、さらに大きくなった。その反応に、心臓が早鐘を打つ。

「前にも言ったと思うけど、お前は、俺の初恋なんだ」
「……っ!」
「卒業間近に、俺に言ったことを覚えてるか?」
「え? 私、……何か言ったの?」

 やっぱり覚えてないようだ。そりゃあ、そうだよな。
 再会した際に、顔を見ても思い出せない……そんな程度の男だろうから。
 それでも、思い出してくれただけで、俺は嬉しかった。

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