財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 投資家として、こうした事態の市場反応が起こることは理解している。
 これ以上株価が暴落しないように、全責任をとって社長を辞任をしようものなら、すぐさまインサイダー取引で捜査対象になるだろう。
〝機密情報が漏洩した疑いがある〟と公表する前に株価が急落してしまっている今では、回避策を取ることもできない。

 それから一時間もしない間に、問い合わせの電話がひっきりなしにくるようになった。

「社長、エントランス前に報道陣が殺到しています。いかがしますか?」
「……警備の者を増やしておけ」

 及川の報告に、溜息が漏れ出す。
 手元のタブレットのニュースでは、『国内最大手の投資会社・片桐キャピタルが多額の投資をした、S社の新技術の情報が、海外へ漏洩した疑い』と表示されている。
 片桐グループ全体の株価も暴落していて、片桐グループの会長でもある父親から厳重注意を受けた。

 虎視眈々と後継者の座を狙う奴らが、ここぞとばかりに足元を掬いに襲いかかってきそうだ。

 片桐キャピタルは無関係──そう言い切れるはずなのに、片桐財閥の御曹司で、世界的にも名の通る投資家であるばかりに、片桐グループ全体の信頼が失墜していく。
 次々と押し寄せる問い合わせと指示に追われ、俺は生まれて初めて、焦りを感じていた。
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