財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 マンションを出た私は、意を決して実家の玄関をくぐった。

「ただいま~」

 私の声に気づいた母が、キッチンから駆けてきた。

「……李茉? どうしたの、こんな朝早くから……って、その荷物は何……!?」
「……帰って来ちゃった」

 泣き腫らした目を隠すように笑ってみせると、母はすぐに察したようだった。

「ここはあなたの家なんだから。いつだって帰ってきていいのよ」

 その言葉に、胸がじんと熱くなる。
 問い詰められる覚悟をしていたから、その優しさが余計に沁みた。

「仕事は? 休みなの?」
「ううん、半休もらったの」
「……そう」

 母はそれ以上何も聞かなかった。その沈黙が、今は一番ありがたい。
 
 二階にある自室に荷物を置き、ひとりになった瞬間、私はスマホを開いた。
 ニュースアプリには、片桐グループの混乱が連日トップに表示されている。

【片桐キャピタル、機密情報漏洩か】
【片桐グループ全体の株価、歴史的大暴落』

 惺也くんが、世界中から責められている。
 ……私が、彼をこんな状況に追い込んでしまったんだ。

 父の会社を救うために奔走してくれたのに、結果的に迷惑をかけてしまった。
 彼の未来を守るために身を引いたけれど、何も力になれない自分が、ただただ情けなかった。
 
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