財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 その晩、離婚届を見つけた惺也くんから連絡が来るかと思ったけれど──スマホは静かなままだった。

 勝手に黙って家を出ていった私に、気分を害したか、見切りをつけたか。
 夜中に何度もスマホを確認してみたが、結局、電話もメールもこなかった。

 それから数日、テレビやネットのニュースを通して、惺也くんの近況を知る日々が続いた。
 財閥の御曹司を捨てた身の私は、もう彼の心配をすることさえ許されないのかもしれない。
 それでも、気になってしかたがなかった。

 実家に戻って一週間が経った、ある日の昼過ぎ。
 給食の食器を園児たちと片づけていると、園児が心配そうに顔を覗き込んできた。

「りませんせい、おなかいたいの?」
「え……?」

 無意識に顔をしかめて、しくしく痛むお腹に手を当てていたみたい。
 夜もあまり眠れず、食事も給食以外はほとんど喉を通らない。
 胸の奥の不安が、ずっと消えない。……ダメだな、私。
 園児たちに心配されるような先生じゃいけないのに。

「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとうね」

 駆け寄ってくる園児たちをぎゅっと抱きしめると、不安で凍えそうな心が、少しだけ温かくなった気がした。
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