財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
「まだ何かあるのか?」
「例の、不正アクセスしたハッカーを突き止めました。すでに身柄を確保しております」
「……そうか。情報が外部に漏れないように隔離しておけ」
「承知しました」

 俺は窓の外に視線を向けた。
 そして父に言われた言葉を思い出す。

『事態が収拾できなければ、後継者の座は渡さん』
 片桐のトップに立つには、今の事態を収拾するしかない。

「及川」
「はい、社長」
「会社に着いたら、退任届と株式売却の書類を揃えてくれ」
「はい? 社長、会社も社長の座も手放すのですか?」

 俺の言葉に驚いた及川は、バックミラー越しに視線を送ってきた。

「ああ、……それが今できる最善の策だろうな」
「……わかりました」

 父親の望むものと俺の望むものは違う。
 けれど、世界を動かすほどの財界人になるという意味合いでは、同じなのかもしれない。
 俺が目指すのは、目先の利益に囚われない、何手も先を読む……そんな男だ。

 その日のうちに、父親から『買収合併の提案を受け入れると、宝生会長に伝えてたからな』と電話で告げられた。
 昔から即断即決の父だから、事態が急転するのも時間の問題だろう。
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