財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 両親は顔を見合わせ、顔面蒼白になる。
 困惑するのも無理はない。私だって、彼から『五億円を肩代わりする』と言われて、現実なのか、非現実なのか、一瞬わからなくなったくらいだもの。
 一般人が簡単にどうこうできる金額でないのは明白だし、 娘の交際相手だからと、安易に理解できるものでもない。
 両親は、私の真剣な表情に言葉を失っていた。

 本当のこと──契約結婚で、借金返済と引き換えに結婚を迫られた、なんて言えるわけがない。
 だから私は〝好きな人がいて、その人と結婚したい〟という状況を話すしかなかった。

 そこまで思い返したところで、私は現在のリビングへ意識を戻した。ちょうどその時──玄関のチャイムが鳴った。

「来たみたい!」

 リビングは一気に緊迫した空気に包まれる。
 母は手櫛で髪を整え、父は緊張を紛らわそうと咳払いをした。

 私が玄関ドアを開けると、三つ揃えに身を包んだ片桐くんが、高級フルーツのカゴ盛りを手にして立っていた。

「いらっしゃい」
「ご両親は……?」
「リビングにいます」

 私の返答に安堵の表情を見せる彼。
 もしかして、拒絶されて、不在にされるかと思ったのかしら……? 意外な一面に、思わず口元が緩む。
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