財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 戸惑う父に、片桐くんは迷いなく答えた。

「一点の曇りなく、李茉さんを妻に迎えたいので」

 両親は、彼の誠実さに息を呑む。
 だけど、私の胸には別の言葉が浮かんでいた。

 九石精工の技術が欲しいから。
 五億円払っても採算が取れるから。
〝結婚〟は外部への信用アピール……それ以外に、彼の意図はない。

 小一時間ほど話し合った結果、父は会社を彼の手腕に任せることにし、契約書にサインした。

 片桐くんは、最後に婚姻届を差し出し、「証人欄にご署名いただけますか」と頭を下げた。
 両親は迷いながらも、片桐くんの誠実さに押され、サインしてくれた。

「……娘を、どうかよろしくお願いします」

 頭を下げる父に対し、片桐くんは立ち上がり、深々とお辞儀をした。

「こちらこそ、至らぬところがあるかと思いますが、よろしくお願いいたします」

 胸がちくりと痛む。
 ……こんなに誠実に見えるのに。でも、これはあくまでも〝ビジネス婚〟なのよね。
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