財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 両親への挨拶を終え、私は〝デート〟と称して連れ出され、片桐くんのマンションに連れてこられた。

 今朝も見たはずなのに、改めて見渡すと、最上階──というだけで十分すぎるほどなのに、桁違いの展望と豪奢さに圧倒される。
 けれど、もっと驚いたのは、この最上階のフロアだけではなく、タワーマンションそのものが彼の所有物らしい。
 一戸の物件だけでも数十億円しそうなのに、マンション一棟丸ごと……幾らになるのか想像もできない。

 そんな場所に、これから住むの……? 考えただけで、溜息が漏れる。

 ダイニングテーブルの上には、豪華な夕食が並んでいた。
 
「何か、お飲み物とおつまみでもご用意しておきましょうか」

 ハウスキーパーの(わか)(ばやし)さんが会釈し、尋ねてくる。
 四十代と思われる彼女は、拘りの強い片桐くんの指示も難なくこなすエキスパートらしい。
 彼が出張で不在の時以外、ほとんど通ってくれているそうだ。

「……いや、いい。今日はもう上がってくれ」
「承知しました。では、失礼いたします」

 若林さんが部屋を出ていき、二人きりになった瞬間──空気が少しだけ重くなった。
 片桐くんが黒いファイルを手に取り、テーブルの上に置く。

「食べる前に……いいか?」
「……はい」

 彼は契約書を開き、淡々と説明し始めた。
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