財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 私の両親に挨拶をした日から、二週間後の土曜日。
 日中に引っ越しを済ませ、初めて夫婦として迎える夜。

 婚姻届は数日前に提出済み。
 すでに戸籍上は夫婦──なのに、胸の奥はずっとそわついている。

 若林さんがつくってくれた栄養満点の夕食をいただき、私はキッチンで食後の珈琲を淹れていた。
 その時、背後からふわりと抱きしめられた。

「……やっと、この日がきた」

 耳元に落ちた声は甘美で、本気で愛されていると錯覚してしまいそう。
 でも──好きだと言われていない。愛しているとも言われていない。
 きっと、性欲の処理がしたいだけ……そうに違いない。
 胸がぎゅっと苦しくなる。わかっていたことなのに……。
 寝室が同室で、ベッドも同じ。入籍したからには夫婦なのだから、夜の営みだって……あるのも当然。

 片桐くんの腕の中で体が反転させられ、熱い眼差しで見つめられる。
 わずかに傾いた顔が近づき、瞼をぎゅっと閉じると、唇が重なった。
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