銀河の雫
数日後、会社が借り上げたアパートメントで、荷物の整理をしていると電話が鳴った。
「橘さん?」
『おう、日向、現地はどうだ』
「ニューヨークは、やっぱり寒いですよ」
『そうか』
「設営の準備は当初の計画通り順調です。今、部屋の片づけしてました」
『うん』
「どうかしました?」
『あぁ、安藤薫さんに会ったよ』
「そうですか」
『うん。その安藤さんが気になることを言ってた』
「気になること?」
『安藤さんが言うには、自分のせいで、君と月浦さんって派遣社員を仲違いさせてしまったって』
「安藤さんのせいで?」
『あぁ』
「確かにちょっと仲違いの状況ではありますが、安藤さんが関係してるかどうかは……」
『そうか……だが俺は大役を任せられた』
「へ?」
『今からその月浦さんの連絡先をLINEするから、連絡して欲しい』
「……月浦さんに?」
安藤さんのせいって、どういうことだ?
俺と安藤薫さんの接点……
最後に出社した日のことを思い返した。
『話なら、私とじゃなくて、他にしたい人がいるんじゃないですか?』
もしかして、安藤さんに橘さんの話をしたときに見られてた?
そう仮定すると、妙にしっくりくる。
日本が夜になるくらいの時間を見計らって月浦さんに電話をした。
彼女は泣きながら、俺に帰ってくるように促した。
……俺は自分の愚かさに気が付いた。
心のどこかで、分かっていた。
青森のばあちゃん家に俺を預けっぱなしにしていたこと。
突然、岩手の父親の家に連れていかれたこと。
ばあちゃんの死に目に会えなかったことも。
全部、一方的に母親のせいにしていた。
全部、俺のためだったのに。