愛が全てじゃないけれど
「迷惑? 慶ちゃんがそう言った?」
小花ちゃんが自分の爪を眺めながら笑った。
「言わなきゃわからない? 会社で待ち伏せなんて、上司や同僚に何を言われるかわからないわ」
「今時そんなこと――」
「――今も昔もない。考えればわかることでしょう。それに、たとえ社内で待っていたにしても、大声で名前を呼んだり、初めて話をする相手に『元カノ』かだなんて詰め寄ったりしない」
「うーわ! 元カノの嫉妬ってみにくっ! 元カノを元カノって言って何が悪いの!? 未練がないって嘘でしょ。知ってるんだから。慶ちゃんにつきまとってること!」
随分と猫を被るのが上手らしい。
とはいえ、嘘を言っているようにも見えない。
「私は慶太朗に未練なんてないし、つきまとってもいない。慶太朗がそう言ったの?」
「言わなくてもわかるわ。慶ちゃんが私と付き合えないって言うのは、しつこい元カノが私を狙わないようにかばってくれてるのよ」
思い込みというか、妄想……?
とにかく、慶太朗が自分を受け入れない理由が自分にあるとは、微塵も想っていないよう。
ここで私は思い出した。
「あなた、合コンの時に慶太朗は『お金はなくても尽くしてくれそうだからヤる』とか言ってたわよね?」
驚くとか焦るなんて反応を期待していたわけではないが、それが普通だと思っていたかもしれない。
だから、彼女がバカにしたようにふっと鼻で笑って、私の方が驚いた。
「盗み聞き? ださっ!」
仕事終わりで疲れているところを呼び止められたのは私なのに、どうしてなんの関わりもない小娘にこんな言われ方をしなければならないのか。
さすがに、ムカつく。
「盗み聞きって言葉の意味、知ってる? 公共の場であんな大きな声で話していたら、みなさん聞いてくださいって言っているようなものでしょう」
「はぁ?」
「で? 慶太朗は尽くしてくれた? あなたの言い方だと、迷惑がられているようにしか思えないけど?」
「そんなことない! 付き合えないとか言っても追い返したりしないし、慶ちゃんはいつも優しいもの! 付き合えないのも、おばさんが可哀想だからだもん!」
だもん……って言われても――、っておばさんって言った!?
二十八でおばさん呼ばわりとは、普通にカチンとくる。
決して、私の心が狭いからじゃない。
「私がおばさんなら慶太朗はおじさんでしょう? 若くて可愛いはずの自分がおじさんに見向きもされないなんて、可哀想ね」
大人気ないと言われても仕方がない。が、言ってしまった。
こんな年下の子に本気でムカつくとか、私もまだまだね……。
とにかく、さっさとこの場を終えたい。
私は可愛い顔で睨んでいる小花ちゃんに、営業スマイルを向けた。
「とにかく――」
「――慶ちゃん取られて悔しいんでしょ! おばさんの僻みってマジ憐れ! もう話しかけないで!!」
私のスマイルを返せ。
ってか! 話しかけてきたのはそっちでしょ!
身勝手な言葉に唇の端が引き攣る。
小花ちゃんは言い逃げして、走り去った。
行き場のない怒りに、開いた口が塞がらない。
「なんなのよ……」
小花ちゃんが自分の爪を眺めながら笑った。
「言わなきゃわからない? 会社で待ち伏せなんて、上司や同僚に何を言われるかわからないわ」
「今時そんなこと――」
「――今も昔もない。考えればわかることでしょう。それに、たとえ社内で待っていたにしても、大声で名前を呼んだり、初めて話をする相手に『元カノ』かだなんて詰め寄ったりしない」
「うーわ! 元カノの嫉妬ってみにくっ! 元カノを元カノって言って何が悪いの!? 未練がないって嘘でしょ。知ってるんだから。慶ちゃんにつきまとってること!」
随分と猫を被るのが上手らしい。
とはいえ、嘘を言っているようにも見えない。
「私は慶太朗に未練なんてないし、つきまとってもいない。慶太朗がそう言ったの?」
「言わなくてもわかるわ。慶ちゃんが私と付き合えないって言うのは、しつこい元カノが私を狙わないようにかばってくれてるのよ」
思い込みというか、妄想……?
とにかく、慶太朗が自分を受け入れない理由が自分にあるとは、微塵も想っていないよう。
ここで私は思い出した。
「あなた、合コンの時に慶太朗は『お金はなくても尽くしてくれそうだからヤる』とか言ってたわよね?」
驚くとか焦るなんて反応を期待していたわけではないが、それが普通だと思っていたかもしれない。
だから、彼女がバカにしたようにふっと鼻で笑って、私の方が驚いた。
「盗み聞き? ださっ!」
仕事終わりで疲れているところを呼び止められたのは私なのに、どうしてなんの関わりもない小娘にこんな言われ方をしなければならないのか。
さすがに、ムカつく。
「盗み聞きって言葉の意味、知ってる? 公共の場であんな大きな声で話していたら、みなさん聞いてくださいって言っているようなものでしょう」
「はぁ?」
「で? 慶太朗は尽くしてくれた? あなたの言い方だと、迷惑がられているようにしか思えないけど?」
「そんなことない! 付き合えないとか言っても追い返したりしないし、慶ちゃんはいつも優しいもの! 付き合えないのも、おばさんが可哀想だからだもん!」
だもん……って言われても――、っておばさんって言った!?
二十八でおばさん呼ばわりとは、普通にカチンとくる。
決して、私の心が狭いからじゃない。
「私がおばさんなら慶太朗はおじさんでしょう? 若くて可愛いはずの自分がおじさんに見向きもされないなんて、可哀想ね」
大人気ないと言われても仕方がない。が、言ってしまった。
こんな年下の子に本気でムカつくとか、私もまだまだね……。
とにかく、さっさとこの場を終えたい。
私は可愛い顔で睨んでいる小花ちゃんに、営業スマイルを向けた。
「とにかく――」
「――慶ちゃん取られて悔しいんでしょ! おばさんの僻みってマジ憐れ! もう話しかけないで!!」
私のスマイルを返せ。
ってか! 話しかけてきたのはそっちでしょ!
身勝手な言葉に唇の端が引き攣る。
小花ちゃんは言い逃げして、走り去った。
行き場のない怒りに、開いた口が塞がらない。
「なんなのよ……」