秘密を食むのは魅惑の唇

「美味し…!やっぱり千夏の作るハンバーグが世界一!」

 大好きなハンバーグを口いっぱいに頬張る。千夏の料理はどれも美味しいけれど、今日のハンバーグは格別に感じる。

「大袈裟。でも、ありがとう。そんなに喜んでもらえると作った甲斐があるよ」
「大袈裟じゃないってば。あー、1週間の疲れが全部吹き飛ぶ~!」

 もぐもぐと咀嚼しながら千夏を見ると、彼女は嬉しそうにくすくすと笑っていた。その笑顔のたびに動く唇が可愛くて、やっぱり目が離せない。
 そんな邪念を取っ払うように再度食事を進めれば、ふと千夏が口を開いた。

「そういえば、明日から休みだけどさ。どっか行きたいところある? 久しぶりに遠出でもする?」

 千夏が僕の好みに合わせて、テーマパークやショッピングモールに行こうと提案してくれるのが長年の付き合いから分かる。普段はインドアな千夏が、僕のために気を使ってくれているのが分かって、自然と胸が温かくなるのを感じて仕方ない。でも、今の僕が本当に求めているものは外にはなかった。
 僕はスプーンを置いてテーブルの上で小さく手を組む。少し迷った後、勇気を出して千夏を見つめた。

「……ううん。どこにも行かなくていい」
「家でゴロゴロしたい感じ?もちろんいいよ」
「それもあるけど…その、」

 心臓がドクドクと音を立てる。恥ずかしいけれど、どうしても叶えたいことがある。

「……明日、どこも行かないで、お家で1日中イチャイチャしたいなーって…」
「……」
「ここ最近、千夏と全然ゆっくりできてなかったでしょ?俺、もう限界で。そのー…明日、千夏のこと、1日中独り占めしていい…です、か?」

 言いながら、自分の耳が熱くなっていくのが分かった。普段甘えているとは言え、こうして真正面からおねだりするのは訳が違う。それでも、千夏の綺麗な目をまっすぐ見つめながら必死におねだりする。
 
 千夏を独り占めして、その綺麗な唇を明日1日だけでもずっと僕だけのものにしたい。

 そんな素直な思いを伝えれば、千夏は少し照れたような顔をした後、静かに答えた。

「……分かった。じゃあ、明日は1歩も外に出ない日ね」
「本当!? やったー!」

 嬉しさのあまりテーブルを挟んで身を乗り出すと、「落ち着きなさい、まだご飯の途中」といつものクールな調子でいなされてしまった。でも、千夏の頬がほんのり赤くなっているのを、僕は見逃さなかった。
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