秘密を食むのは魅惑の唇
 お風呂上がり。パジャマに身を包んでベッドに入った瞬間、僕の自制心は完全に限界を迎えていた。いや、よくここまで持ったと思う。

「ちーなーつー、もう限界。いちゃいちゃしよ?」

 ふにゃふにゃの声で千夏の胸元に顔を埋め、すりすりと甘える。千夏から香る温かな匂いに包まれて、心がとろけていく気がした。千夏が僕の髪を優しく撫でてくれる心地よさに喉を鳴らしながら、ゆっくりと顔を上げる。脳のストッパーが効かなくなったのか、自然と視線が千夏の唇に固定される。

「……ん」

 待ち焦がれていた瞬間。
 吸い寄せられるように唇を重ねた。柔らかく、温かい千夏の唇を確かめるように何度も食む。1週間分の渇きを癒やすように深く甘く、何度も何度も角度を変えてキスを交わした。

 けれど、どれだけキスが深くなっても、千夏は頑なに『目』を閉じない。至近距離で、僕の顔や目をじっと見つめ続けている。

(……もう、恥ずかしすぎるって…!)

 限界を迎えた僕は、たまらず一度唇を離した。耳が真っ赤なことが、自分でも変わるほどの熱を感じる。
 唇が離れた彼女は、きょとんとした顔で首を傾げる。まるで、自覚がないとでもいうような表情だ。

「もう!千夏、キスの時ぐらい目閉じてって!!」

 毎回こうやって抗議しているのに、千夏はいつも楽しそうに微笑むだけだ。

「無理。だって、キスしてくるときの柊斗の『目』、色っぽくて大好きなんだもん。こんな綺麗なもの、閉じて見逃すわけないじゃん」
「うっ…! 」

 千夏のストレートすぎる言葉が胸に突き刺さと、僕は完全にフリーズした。
 格好良すぎる。ズルすぎる。熱が限界突破した僕は、両手で顔を覆ってベッドの上に突っ伏して悶絶した。

「も~……千夏、格好良すぎ……!反則……!」
「ほら、柊斗。まだチャージ足りないんでしょ?」

 背中をポンポンと叩かれ、悔しさと愛おしさで胸がいっぱいになる。指の隙間から、千夏のその魅力的な唇を睨むように見つめ返した。

「……もう、絶対に目閉じさせてやるんだから」
「ふふっ、できると思うの?」

 挑発するように笑うその唇を、今度は少し強引に塞ぎにいった。
 
__今度こそ翻弄して目を閉じさせてやる

 そう意気込みながらも、僕自身、千夏の唇の心地よさにどこまでも溺れていくのだった。
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