あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「倉橋さん、でしたか。大抜擢だねえ。頑張って」
感じのいい声だった。
(……でも、なんだろう。感じはいいのに、この人の言葉って変にねっとりしてる)
「──承知しました」
違和感を覚えながらこのみが答える。
篠宮は一度だけこのみを見て、すぐに資料へ戻る。
昨日、渡り廊下でフルネームを呼んだ人と同一人物とは思えない、事務的な目だった。
会議が終わって席に戻ると、課長が寄ってきた。
「……なんでお前なんだろうな」
「私が聞きたいです」
「普通は部長か俺だろ。まぁ、俺としては進んでやりたい仕事ではないけど」
私も別にやりたくはない。
そのうえ、わざわざ部長を逆撫でするような言い方をして……。
会議が終わって一時間もしないうちに、千夏からのメッセージがきた。
『ねえ! 例のコンサルの相手役に指名されたってほんと!?』
情報伝達が速い。
この会社の機密情報はどうなってるんだろうと不安になる。
『相手役って言い方やめて。仕事の窓口』
『相手役じゃん! てかなんでそういう体制の話が先に総務に回ってきてないのよ~』
『総務なのに、何にも知らなかったんだ』
『総務でも知らないことはあるの~。あ、でも委嘱契約の書類は見た。篠宮さん、三十二歳だって』