あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
藤堂常務の発言に対しファンドの男も何ごとか笑顔で返し、一枚の紙を配る。
このみはそれを手に取った。
どうやら今後の体制図のようだ。
「再建計画の策定にあたって、各部門にカウンターパートを置かせていただきます。人事領域は──」
「倉橋さんにお願いします」
ファンドの男の言葉にかぶせるように篠宮が言う。
一瞬、会議室が静まり返った。
人事部長が咳払いをする。
「篠宮さん、人事領域の窓口ということでしたら、私が」
「部長には決裁をお願いします。実務のカウンターパートは倉橋さんに」
「いや、しかし、倉橋はまだ主任で」
「役職は関係ありません」
篠宮は手元の資料から顔を上げずに続ける。
「必要なのは、この会社の制度と運用データをいちばん正確に把握している方です」
部長の顔が少し赤くなる。
それはそうだ。
部長の前で、制度をいちばん知っているのは主任だと言ったようなものだ。
(なんで、そんなこと言うのよ……)
このみは自分の力の及ばないところで、バチバチされることにひやひやしながら、この嵐のような空気が収まるのを待った。
そして、そんな沈黙を埋めてくれたのは、藤堂常務だった。
「いいじゃないですか。若い人に任せるのは、いいことです」
柔和な表情。