あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

「消させられたんでしょ。違う?」

違う、と即答できるほど、図太くはなかった。

「制度はね、正しく動いただけ。私みたいなのを低くつける制度だった、それだけのこと。倉橋のせいにするなら、まず作った役員のせいにしなきゃ、順番がおかしいでしょ」

(……叱り方まで、変わってない)

営業の頃、商談の詰め方を間違えるたびに言われた。
謝る前に、順番。

料理が来た。
八重樫は箸を割って、ほら、と促した。

「魚、冷めるよ」

言われた通り箸を持ったのに、最初の一口が、なかなか入らなかった。
目の縁が熱くて、焼き魚の湯気のせいにするには、湯気が足りなかった。

八重樫は、今のことを話してくれた。
北関東の電機メーカーで、研修担当をしていること。
新しく入る人に、仕事を教えていること。

「数字にならない仕事ばっかりしてたら、それが仕事になって、今は研修や育成周りを担当してる」

笑い方が、営業時代と同じだ。
後輩の失敗を面白がって、絶対に責めない、あの笑い方。

「で、聞いたよ。あの項目、生き返ったんだって」

「……はい。新しい制度に、入りました」

「起案者の欄に、倉橋の名前が入ってるって?」

このみは、隣を見た。
篠宮は素知らぬ顔で味噌汁を飲んでいる。
どこまで話したんですか、と目で聞いたが、返事はなかった。

「いいことだよ」

八重樫が言った。

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