あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

「倉橋の名前が入ってるほうがいいよ。作った人が中にいる制度は、強いから」

それから八重樫は、二年前のことを話した。
再建の終わりかけの会社に、変なコンサルがいたこと。
面談で前職を聞かれて、削られた項目の話をしたこと。

「そしたらこの人、真顔で黙っちゃってさ。何か変なこと言ったかなって思ってたら、二年後にいきなり夜の十時半に電話してくるんだもん。非常識でしょ」

「申し訳ありません」

「褒めてるの。……会ってほしい人がいます、って言われて、二つ返事だったよ。ずっと気になってたから倉橋のこと。ちゃんと笑っていてほしかったんだよ」

箸が、止まった。
今度は、湯気のせいにできなかった。

八重樫は何も言わずに、自分の魚をきれいに食べ進めて、頃合いを見て、お茶のおかわりを頼んでくれた。
帰り際、店の前で、八重樫は思い出したように言った。

「てか、あんたたち付き合ってるでしょ」

「──えっ」

「はい」

即答したのは、隣だった。
八重樫は声を出して笑った。

「即答じゃん。倉橋、いい人捕まえたね」

手を振って、駅の反対口へ歩いていく。
その背中は、送別会の日に見送った背中より、ずっと軽そうに見えた。

帰り道は、日曜の夕方で、街が少しだけ静かだった。

「八重樫先輩の件、ありがとうございました」

このみが言うと、篠宮は前を向いたまま頷いた。

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